過去2回の離婚調停不調
過去2回にわたって相手方から申し立てられた離婚調停は、結局のところ2回とも「不調(不成立)」という形で幕を閉じた。
調停が不調に終わった後、相手がどう動くのか。普通に考えれば、次は「裁判(訴訟)」へと駒を進めてくるのが自然な流れだろう。私自身、いよいよ法廷での争いになるのかと身構えていた。しかし、待てど暮らせど相手方から訴訟を起こしてくる気配は一切なかった。
「あんなに離婚だと言い張っていたのに、なぜ動かない?」
しかも、今回は弁護士をつけていたのに。静けさだけが続く日々の中で、俺は今後どうしようかと考える毎日を送っていた。往復4時間の長い通勤の間、頭を巡るのは今後の身の振り方ばかり。休みの日は、モヤモヤする頭を空っぽにしたくて、足が痛くなるまでひたすら外を歩き回ることもあった。
前に進んでいるのか、後ろに下がっているのかすら分からない、宙ぶらりんで奇妙な停滞期。
それが俺の日常になっていた。
突然届いた「茶封筒」
そんなある日のことだった。 自宅のポストに、見慣れた、いや、決して見慣れたくなどないものが投函されていた。
家庭裁判所からの「茶色い封筒」である。
この茶色い封筒というやつは、本当に嫌なものだ。ポストの中で異様な存在感を放ち、手にした瞬間に心臓の奥がギュッと掴まれるような、あの嫌な動悸が走る。これまでの2回の調停の始まりも、すべてはこの封筒からだった。少なくとも、平日は中身を見たくない。
「訴訟か? それとも別の何かか?」
仕事が休みの土曜日、淹れたてのコーヒーを飲む気にもなれず、俺は封筒を睨みつけた。深呼吸をしてから、ペーパーナイフで慎重に封を切る。中から出てきた数枚の分厚い文書。そこに書かれていたタイトルを見て、私は思わず動きを止めた。
『婚姻費用増額調停申立書』
訴訟(裁判)ではなかった。相手が突きつけてきたのは、「生活費(婚姻費用)をもっと寄越せ」という要求だったのである。
怒りと呆れ、そして確信
文書の文字を目で追いながら、私の中で「怒り」と「呆れ」が入り混じった複雑な感情が湧き上がってきた。
過去2回、あれだけ声高に「離婚したい」と調停を申し立てておきながら、いざ不調になっても訴訟には踏み切らなかった。その理由は明白だ。本気で関係を終わらせる覚悟も、法廷で白黒つけてリスクを背負う覚悟もなかったからだ。私から見れば、中途半端な気持ちの表れである。
離婚はしない。でも、金はもっと欲しい。
それが相手の出した答えだったのだ。関係を修復する気も、完全に断ち切る気もないまま、ただ経済的な要求だけをエスカレートさせてくる。このまま相手のペースに巻き込まれ続ければ、私はただお金を吸い取られながら、生殺しの状態で何年も時間を無駄にすることになる。
その事実を突きつけられた瞬間、俺の中で張り詰めていた何かがプツンと弾け、同時に腹の底から静かで熱い炎が燃え上がるのを感じた。
反撃の狼煙。「今度は私から申し立てる」
さて、どうしたものか。
相手が中途半端なことをしてくるなら、こちらがやることはもう一つしかない。
「……そう来るなら、今度はこちらから『離婚調停』を申し立ててやる」
これまで、私はどこか「受け身」だった。相手がアクションを起こすのを待ち、それに対して防御や反論をするだけのゲーム。嵐が過ぎ去るのを待つような、そんな戦い方をしていた。
でも、もうそのステージは終わりだ。相手が「お金」を要求してくるなら、私は「完全な決別」を突きつける。
今回の調停は、これまでとは全く意味が違う。今度は、私自身が申し立てるのだ。私の意志で、俺の人生を取り戻すために。そして、今度こそ必ず離婚する。たとえこの先、相手がまた逃げ腰になって調停が不調に終わったとしても、その時は私の方から迷わず訴訟(裁判)を起こす。
何年かかろうが、どんなにエネルギーを消耗しようが、絶対に最後までやり抜いてやる。
その決断を下した後の私の行動は早かった。 すぐさまMacを開き、必要な手続きや書類を一気に調べ上げた。頭の中はかつてないほどクリアだった。自分が何をすべきか、どこへ向かうべきかが完全に定まったからだ。
(第1章へ続く)
