はじめに|エッセンシャル思考との出会い
情報があふれ、選択肢が無限に広がる現代社会。
私たちは常に「あれもやらなきゃ」「これも手に入れなきゃ」というプレッシャーに晒されている。気がつけばスケジュール帳はびっしり埋まり、身も心もパンク寸前……
そんな風に日々を消費してしまっていないだろうか?
私自身、以前はまさにそんな状態だった。
しかし、エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする(著:グレッグ・マキューン/かんき出版)に出会い、自分の生活を根本から見直すことで、見える世界が劇的に変わった。
エッセンシャル思考の核となるメッセージはとってもシンプル。
「より少なく、しかしより良く(Less but better)」。本当に重要なことだけをシビアに見極め、それ以外を大胆に捨て去る。そして、残した重要なことが無意識のうちに実行できるように「しくみ化」する。
今回は、この「見極める・捨てる・しくみ化する」の3ステップを、私自身のライフスタイル変革の実体験を交えて紹介したい。
見極め、そして「捨てる」:酒とタバコの引退
エッセンシャル思考の第一歩は、自分にとって「何が本当に重要か」を見極め、不要なものを捨てることだ。私にとって最大の「捨てる」決断は、長年の習慣だった酒とタバコからの引退だった。
以前は、これらが日々のストレス解消や、人間関係の潤滑油として「不可欠なもの」だと完全に思い込んでいた。しかし、エッセンシャル思考のフィルターを通して冷静に自分の生活を棚卸ししてみると、これらが奪っているものの大きさに愕然とした。
お金の消費はもちろん痛手だが、「お金の正体」とは結局のところ、自分が労働して削った「命の時間」の結晶である。それを無自覚に燃やしていることに気づいた。
そして、何よりも深刻だったのは「時間」と「脳のリソース」の浪費だ。「今日は誰とどこで飲もうか」「タバコを吸える場所はどこか」といった些細な決断や、翌日の二日酔いによるパフォーマンスの低下。これらが、私の大切な脳のエネルギーをじわじわと、しかし確実に削り取っていた。
これらは自分の可能性に対する単なる「ノイズ」でしかない。そう腑に落ちた瞬間、私はスッパリと捨てる決断ができた。手放してしまえば嘘のように身軽になり、無駄な選択肢が消えたことで、脳に圧倒的な「余白」が生まれた。そして、それらに依存していたということが、はっきりわかった。依存しない生活の快適さ、健康体に近づいていく自分がたまらなく嬉しかった。
実行を「しくみ化」する:1日1食・野菜多め・1万歩生活
不要なものを捨てて生まれた余白に、今度は本当に大切なものを配置していく。私にとってそれは「健康でクリアな肉体と精神」だった。
しかし、いくら健康が重要だとわかっていても、「毎日頑張って運動しよう」「毎食ヘルシーなものを選ぼう」と気合や根性に頼っていては絶対に長続きしない。人間の意志力(ウィルパワー)には限界があるからだ。
ここで生きてくるのが、エッセンシャル思考の最終ステップ「しくみ化」である。努力しなくても、自動的に実行されるシステムを作ってしまうのだ。
私が構築したしくみは、「1日1食」「野菜もりもり」「毎日1万歩」という非常にシンプルなルールの徹底だった。
1日1食に絞ることで、「朝ごはんは何にしよう」「昼はどこで食べよう」と迷う決断疲れから完全に解放された。食事の回数が減る分、その1食にはたっぷりの野菜を取り入れ、質にこだわる。そして、日常の移動や隙間時間をパズルのようにつなぎ合わせ、息をするように1万歩を歩き切る。
これらを毎日の「当たり前のルーティン」に組み込むことで、意志の力を一切消費することなく、自動的にベストな健康状態が維持されるようになった。
今、52歳の自分が30歳以降で一番若いんじゃないかとさえ感じる。
脳のリソースを「本当に大切なこと」へ全集中させる
酒やタバコというノイズを排除し、日々の食事と運動をしくみ化した結果、私の日常からは「どうしようかな」という無駄な迷いが劇的に消滅した。
「脳のリソース管理」という観点から見ると、これは革命的な変化だ。私たちの脳が1日に使えるエネルギー容量は決まっている。日々の細々とした選択や、悪習慣の誘惑と戦うことにエネルギーを使ってしまうと、いざという時に一番大切な仕事や、新しいアイデアの創造に注ぐ力が残っていない。
エッセンシャル思考を実践し、生活を極限までシンプルに削ぎ落としたことで、私の脳は常にクリアでフラットな状態を保てるようになった。浮いた時間、お金、そして有り余る脳のエネルギーを、自分が心から「やりたい」「価値がある」と思えることに100%投資できるようになった。
おわりに
『エッセンシャル思考』は、単なる仕事術や時間術ではない。自分の人生の主導権を自分自身の手に取り戻すための哲学である。
「全部やろう」とするのは、実は何も選んでいないのと同じこと。
何かを得るためには、何かを手放さなければならない。
もし、今、あなたが日々のタスクに追われ、慢性的な疲労感や「本当にやりたいことができていない」という焦りを感じているなら、一度立ち止まって自分の生活を見渡してほしいと思う。
あなたの日常の中に、無意識に抱え込んでいる「非エッセンシャル」なものはないだろうか?
それを見極め、勇気を持って手放し、本当に大切なことだけを「しくみ化」できたとき。
あなたの人生は驚くほど軽やかで、豊かで、そして本質的なものに変わると、私は思う。
